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八幡町界隈 花の歳時記44
ソヨゴ(染木)
(株) 宮城環境保全研究所  大柳雄彦


今でも自生する権現森のソヨゴ林
 今回は、私のささやかな自慢話と、それに関わるソヨゴという樹木について紹介をしてみたい。今から31年前の1978年、宮城県沖地震が発生したときのことである。当時、私は宮城県環境保全課(現自然保護課)に在籍していて、制度化されたばかりの環境アセスメントの審査を担当していた。ちょうどその頃、権現森緑地環境保全地域に隣接する山林を対象とする開発行為の申請が出ていたので、仲間とともに現地に出向き調査を行うことになった。梅雨の時期ではあったが、この日は晴天で、夕刻までには仕事を終え、尾根筋の山道を急いで帰る途中、突然もの凄い地鳴りと大きな揺れを感じ思わず近くにある木にしがみついた。恐怖におののきながら揺れの収まるのを待ち、やっと冷静さを取り戻してから掴んでいる木を眺めると、これが今まで見たことのない得体の知れない樹木であった。しかもこれが掴んでいたものだけではなく、辺り一面もこの樹木の集団で、大きな群落を作っていたのである。樹木の名前についてはいささか詳しいつもりでいたが、全く見当のつかない代物であったので、この標本を採取し、早速、東北大学青葉山植物園に持ち込み同定をお願いした。最初のうちは先生方も首を傾げていたが、そこに静岡出身の先生が顔を出し、「中部以西に分布するソヨゴのようだが、宮城県に自生するのは珍しい。」ということであった。そこでこれを確かめるべく現地に同行をお願いし、詳細に検討して頂いた結果、やはりソヨゴに間違いないということになったのである。このことは後日、テレビでも放映され、その発見者として少々面目をほどこしたものであった。
 ソヨゴはモチノキ科の常緑広葉樹で、これまでの天然分布は甲信越及び関東南部以西とされていた。権現森のソヨゴ林は、それより300kmも離れているので、いわゆる隔離分布の群落といえる。おそらく野鳥が持ち込んだと考えられるが、それにしてもよくこの遠距離を運んでくれたものである。
主に尾根筋の弱乾性地に生え、樹高は8mぐらいになる小高木。樹皮は灰褐色を帯び、小枝の基部にコブを作る。葉身は革質で、卵状楕円形、先は短く尖り葉縁に鋸歯はなく、やや波を打つ。花は6月に咲き雌雄別株。雌花は、新枝の葉腋に単生し、雄花は花柄の先に数個散形につく。花弁は5枚で白色、花径は5mmぐらいで小さい。雌花は後に球形の果実となり、赤く熟して柄の先に垂下する。
植物に造詣の深い昭和天皇は、1952年、三重県を行幸のみぎり、次の御歌を詠んでおられる。
          色づきしさるとりいばらそよごのみ目にうつくしき賢(かしこ)島(じま)
 ソヨゴの名は、「そよぐ」からきており、長柄の葉が風に揺れると、そよそよと音を立てるからである。また、表題に掲げた染木は、ソヨゴの俗名でこの木の葉を冬期に採取して臼で搗き、紅色系の草木染に用いたことによる。
 ソヨゴには耐寒性があるようで、近頃は県内でも庭木や公園樹として広く植栽されている。昭和天皇が賛美されているように秋の紅色の果実は美しく、また風にそよぐ葉音を聞くのも風流があり、人気は高くなると思っている。
 さて、このシリーズは歳時記と銘打ってあるので、俳句の一つや二つを紹介しないことには体裁が整わない。ところがソヨゴは俳句の季題から外れているようで、いくら探しても見当たらない。そこで窮余の一策として、わが社の俳人達を庭木のある場所まで案内して詠じていただいたのが次の句である。
                そよかぜにこたえてさわぐソヨゴの葉     慎之介
             電飾のごとくそよごの花咲けり         ひろし
             学園の梅雨の晴れ間にソヨゴ咲く       あや女

第1句の「そよ風」は、初夏の季語「風薫る」を代用したもの、また第2、3句の「そよごの花」は、花期が6月であることから新たに初夏の季語として加えたものと思われる。いずれにせよ、技巧に捉われずにソヨゴの生態を直視した素直な句と感じている。

 
白くて可憐なソヨゴの花
[写真は仙台市泉区にて 山本撮影]


 

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