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八幡町界隈 花の歳時記51

ユズリハ(楪・譲葉)
(株) 宮城環境保全研究所  大柳雄彦


 ミレニアム(1000年紀)という言葉が流行して丁度10年を経過した。その2010年の元旦は、新春寒波の影響で県内にもまとまった雪が降り、清々しい新年を迎えることができた。
 

新しき年の初めの初春の今日降る雪のいや重け吉事 (巻20・4516)

 
 万葉集の掉尾を飾る大伴家持の歌である。正月に雪が降り積ればめでたいことも重なると昔からいわれている。今年こそは、明るい希望の持てる年であるよう期待をしたい。
 
 正月の縁起物に使われるユズリハは、譲る葉に由来する名である。古い葉と新しい葉が一斉に入れ替わることから、これを新旧相ゆずるに見立て、親子相続、子孫繁栄に通じるとして、めでたい正月の門松や注連(しめ)飾りなどの添え物として使われている。
 この習慣は既に平安時代にも行われていたようで、13世紀の中ごろに編纂された現存六帖という歌集に、
 
これぞこの春を迎ふるしるしとてゆずるはかざし帰る山人   
 という藤原知家の歌がある。年末のある日、山仕事を終えた樵(きこり)が山中に生えていたユズリハの枝を切り取り、正月を祝うために持ち帰る様子を詠んだものと思われ、ゆずるはユズリハの古語である。
 ユズリハの漢名は虎皮楠であるが、わが国では楪、譲葉、交譲木、弓絃葉、親子草、杠など、実にさまざまな漢字名が当てられている。一般に和歌や俳句の世界では楪の字が多用されてはいるものの、読みにくいので平仮名で表現することも多い。余談になるが、仕事上の付き合いで杠という人と名刺交換をしたことがある。戴いた名刺の性には、ゆずりはとルビがうたれてあった。


 茎は四方に開出し、整った樹型となる

 

 従前、ユズリハはトウダイグサ科に属していた。しかし、分類学的にみて、この科の系統とは異質な部分が多いということで分離され、新しくユズリハ科が独立したのである。
 宮城県以南(日本海側では富山県以西)の本州、四国、九州に自生し、中国大陸にも分布する常緑中高木。庭木としての歴史は古く、社寺の境内でも良く見られる。自生の北限である本県では、沿海部に多く自生し、南三陸の八景島、貢尻島(ともに石巻市雄勝)などには、直径40cmを超す大木が生えている。枝は太く、まばらに分枝し、葉はその枝端に集まってつく。葉身はやや大きな狭長楕円形で長さ20cm、幅は5cmぐらい、革質で光沢のある濃緑色を帯び、裏面は淡緑色、葉柄は紅色でよく目立つ。雌雄異株で開花期は初夏、前年に伸びた枝の葉腋に総状花序を作り、花弁のない小さな黄緑色の花が群がって咲く。雌花は秋に径8mmぐらいの黒熟した果実となり、野鳥がやってきて好んで食べる。
 


 枕草子には「茎はいとあかくきらきらしくみえたるこそあやしけれどもをかし」とある 

 

何と思へか阿自久麻山のゆづる葉の含まる時に風吹かずかも (巻14・3572)

 
 万葉集の東(あずま)歌(東国の農民たちが作った歌)で題詞が譬喩歌となっている。東国の方言でうたわれており、いささか分かりにくいが、阿自久麻山(場所は不明)のユズリハのつぼんでいる時に急に風が吹くかもしれないぞ、というのが直訳。しかし本意はあの娘が若すぎると思っている間に誰かが言い寄るかもしれないぞということである。なお同じ万葉集の弓削(ゆげ)皇子の歌(巻2・111)では弓絃葉が用いられている。縁起木として知られていたためか、当時から平安時代にかけてユズリハを題材とした歌は多数作られている。
 俳諧では、「ゆずりは」または「楪」が新年の季語とされている。
 

追分や 楪つけし 門並び          鳥越 憲二郎

 
 信州の宿場町として栄えていた追分の正月をうたった句の街道に沿う門毎に注連が飾られ、それに濃緑色のユズリハがつけられている風景が目に浮かぶ。江戸期以降の秀句といわれるものを幾つか紹介してみる
 

ゆづりはの 茎も紅さす あしたかな       園女
ゆづりはに 草の名高き あしたかな        鳥杖
ゆづりはや やがて若葉に 玉の春        如葉
ゆづりはや 口にふくみて 筆はじめ      其角
楪に 筆こころみん 裏表             浪花
餅のこな 楪につき 目(め)出度(でた)けれ   虚子
ゆずりはや 鏡の餅の にじみたれ       全牛
 

 

 1~3句は新春を寿ぎ、4・5句は正月の書き初め、そして6・7句は鏡餅に添えたユズリハを詠んだ句である。
 




 

[写真は仙台市青葉区八幡町にて 山本撮影]


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