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八幡町界隈 花の歳時記60
ヌルデ(ヌルデ)
(株) 宮城環境保全研究所  大柳雄彦



色鮮やかなヌルデの紅葉


  10月23日は、二十四節の一つ霜降(そうこう)である。白い脂肪が網目のように入る牛肉も霜降と書くが、こちらの霜降は、中国から伝わった陰暦の季節区分で、霜が降り始める時期のことをいう。ちょうどこの頃、行楽地からもみじ情報が寄せられてくる。
 落葉広葉樹の多くは、晩秋になると葉の付根に離層※という組織が発達する。そうなると、今まで光合成によって作られていた糖分などは茎への移動は出来なくなり、葉の内部で色々な化学反応が起こる。もみじは一般に黄葉と紅葉に大別されるが、葉内に以前から存在していたカロチンという色素が目立つようになるのが黄葉、アントシアンという赤の色素が新たに出来るのが紅葉である。
 もみじの色のつき具合は、その年の気象条件によって異なる。宮城県では、9月下旬に晴天の日が続き、10月に入ってから急激に気温の低下した年は美しくなる。
 
もみじといえばカエデ科の樹木がその代表格であろう。だが、ウルシ科の仲間も負けず劣らず美しく色づき、身近で見られるヌルデの紅葉もすばらしい。
 ヌルデは、丘陵地の陽当たりの良い場所ならどこにでも生える落葉広葉樹である。崖崩れや荒地には真っ先に侵入し、裸地を緑化させるパイオニア種でもある。成長が早く、1年で1mも伸びるというのに、寿命はいたって短命で、大木に育つのは少ない。
 
 幹は直立し、上部で枝を笠のように広げる。この幹に傷をつけると、白い漆のような液が滲みでる。昔はこの液を木の器に塗ったのが名前の由来とされ、漢字では白膠木と書く。
 葉は大型の奇数羽状複葉で9~13枚の小葉が付き、羽軸にも平行して翼がある。これがヌルデの特徴で、近縁のウルシやヤマウルシとは簡単に区別できる。ヌルデの葉に、奇妙な形の虫瘤が付くのをしばしば見かける。これはアブラムシの仲間が寄生して作る虫癭で、ヌルデミミフシと呼ばれる。内部に多量のタンニンを含み、これを乾燥させたのが五倍子(ふし)で染料や潰瘍、下痢などの薬用に用いる。又、既婚女性の風習であった「お歯黒」の媒染材としても使われていた。
 盛夏の頃、枝先に大きな円錐花序を出し、黄白色の小さな花をたくさん咲かせる。雌雄別株で、果実は径3mmぐらいの黄赤色の扁球形となり、熟すと酸味のある白い粉で覆われる。

特徴あるヌルデの翼

 ヌルデは各地の山野に生えるごくありふれた雑木で、多数の方言名がある。フシノキはこの木の葉に付く虫瘤で五倍子(ふし)を作ったことからきており、シオノキは、実の表面に付く塩辛い成分を舐めて塩分の代用にしたことに由来する。カズノキは、本県も含めて東日本で多く使われる俗名であるが、実は古代の標準名であって、万葉集でも「殻(かづ)の木」として歌が詠まれている。

     足柄(あしがり)の吾(わ)を可鶏山(かづやま)の殻の木の吾をかづさねも殻(かづ)割(さ)かずとも    (巻14.3432)

 東歌(あづまうた)だけで構成される巻14のなかの相模(さがみの)国(くに)の歌。北朝鮮との関連で拉致という言葉が有名になったが、同じ意味で使われる「かどわかす」に、ヌルデの古名「殻の木」を掛け言葉にしてうたっている。つまり、大意は、私をどこかに連れて逃げてください。かずの木を割ってばかりいないでということである。足柄山周辺でうたわれていた民謡とみられている。
 古代の標準名カズノキが現在の和名ヌルデに定着したのは、平安時代の後期のようである。白河院の信任を得て、武将であり、歌人でもあった源仲政は、私家集に次の一首を載せている。

     あまの住む磯の山辺を見渡せば浪にぬるでのもみぢなりけり

 山野に自生するウルシ科の樹木は、例外なく鮮やかに紅葉する。その様子をヌルデは、白膠木紅葉(ぬるでもみじ)、ヤマウルシとツタウルシは漆紅葉(うるしもみじ)、ハゼノキを櫨紅葉(はぜもみじ)と呼び、晩秋の季語として使われる。都市近郊で錦秋といえば白膠木紅葉が代表である。

     もみぢして松にゆれそふ白膠木かな       飯田 蛇笏

 松も向陽の地を好み、ヌルデと共存することが多い。松の濃緑とヌルデの鮮紅とのコントラストをうたっており、自然の植生状態を忠実に描写している句である。

     狐舎の径白膠木の紅葉赫(かく)と燃ゆ      水原 秋桜子
     白膠木紅葉さまよふに似てほとけ道       内藤 とし子

 ヌルデは森林の内部よりも林縁部や道ばたに多く自生する。第1句の赫は、火が真っ赤に輝く状態のことである。

     ぬるでもみぢ床を照らして歌うたげ        藤森 成吉
     幕間(まくあい)に白膠木紅葉を活けもして     竹田 小時

ヌルデの紅葉を室内で楽しんでいる句。なお、ヌルデによってウルシかぶれを起こす人もいるらしいので、活け花の際には注意が必要である。
※広葉樹の葉が離れ落ちる前に、葉柄に輪のように形成される脆弱な細胞層

[仙台市青葉区の山林にて  山本撮影]

ヌルでの虫こぶ

 

  


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