No.33 キョウチクトウ(夾竹桃)
(株) 宮城環境保全研究所  大柳雄彦
夏の花 夾竹桃
夏の花 夾竹桃
葉は3枚ずつ輪生
葉は3枚ずつ輪生

 仙台管区気象台は、7月19日、東北地方の全域が梅雨明けしたものとみられると発表した。7月中の梅雨明けは4年ぶりのようで、また、期間中の降水量も平年を大きく下回る「空梅雨」であったとのこと。二次災害が心配されていた岩手・宮城内陸地震の被災地では不幸中の幸いと安堵の胸をなでおろしているものと思っている。

 梅雨明けを待っていたように元気に咲き始めるのがキョウチクトウである。中近東からインドにかけて原産地とする外来種で、わが国には享保年間、中国経由で長崎に渡来したといわれる。当初、寒冷地には育たないものとされ、主に西日本の寺院などに植えられていた。しかし近頃は、地球温暖化の影響によるものか、東北地方はもとより北海道でも栽培が可能となっている。仙台市内では社寺の境内や住宅の庭木、垣根などに植えられ公害に強いということで街路樹や公園樹としても利用されている。

 キョウチクトウ(Nerium oleander var. indicum)はキョウチクトウ科の常緑小高木。県内の沿岸部に自生するテイカカズラとは同じ仲間である。和名については、いろいろな文献に「花は桃の如く、葉は竹の如きが故に名づく」とあるが、もともと夾竹桃は漢名で、キョウチクトウはその音読みである。樹高は大きくてもせいぜい4m程度、幹は株状になり枝は緑色。葉は3枚ずつ輪生に出て無柄、葉身は革質の狭い楕円形で中央に太い主脈が目立つ。花は枝先に集散して着き、花冠は高杯型で直径は4~5cm、微かに芳香がある。花弁は一重のほか八重もあり、一般に紅色系が多く、まれに白色や黄色がある。
 キョウチクトウは有毒植物で、特に樹皮や根の部分の毒性が強いといわれる。原産地のインドでは、この木を馬殺しと呼び、またわが国でも、明治10年の西南戦争の時、官軍の兵士が、この木の枝で箸を作り食事をしたところ中毒したという記録がある。民間では乾燥させたこの葉を夾竹桃葉と称し、強心薬としているが、ことに心臓に関るものだけに素人療法では、禁物とのことである。

 俳諧では「夾竹桃」が夏の季題。渡来して歴史が浅く、江戸期の句は少ないが、近代の俳壇では華やかさのなかに憂いのある夏の花としてうたわれており、巨匠といわれる俳人たちの句も幾つか知られている。

病人に夾竹桃の赤きこと高浜虚子
夾竹桃 花なき墓を洗ひけり石田波郷
夾竹桃 しんかんたるに人をにくむ加藤楸邨
夾竹桃寺の隣に寺があり丘本風彦
沖に雲湧かせて白の夾竹桃庄中健吉

 閑話になるが、最近藤あや子の唄う「夾竹桃」がカラオケで人気である。雪国出身の演歌歌手がインド原産の夏の花を唄うことにいささか違和感もあるが、巧みな節回しで切々と唄う姿に憐愍の情が伝わってきて聞き応えがある。因みに作詞は小野彩、作曲が伊藤雪彦である。

白のキョウチクトウ
白のキョウチクトウ

赤い八重と白い一重の花

[写真は仙台市青葉区にて 山本・佐藤撮影]
2009年5月15日